まどろみの中、母は言った。

「ロティーネ。私の可愛い子。お前は父のような立派な男になるんだ。

 お前はこの私の息子だ。あの人の息子だ。

 お前には、誰かを護るための力があるのだよ」

 

怪物の子供といじめられたとき、母は言った。

「何故逃げた。お前は確かに怪物の子だろう。

 しかし人は自分より強い者を恐れる。

 だからお前を集団で自分より下だと覚えさせようとしたんだ。

 ならば真正面から敵を屠れ、倒せ。

 お前にはその力がある。逃げてばかりだと、大事なものをなくすぞ」

 

父はどんな人かと聞いたとき、母は言った。

「お前の父はとても強かった。

 当時、一族の中で一番強かった私が、彼には勝てなかった。

 けれど、彼は怪物だと蔑んだ私を、ほめたのだ。美しく、強い女だと。

 だから、お前の父と結婚したんだ。

 彼は、私が強いといったから、悔しくてなぁ」

 

処刑台に上るその前、母は言った。

「復讐にとらわれてもいい。敵を全て殺すことだけを考えていい。

 しかし、お前には気高きサマエル(死の天使)の血と、

 死を告げる首無し騎士の血が流れているのだ。

 だからお前は戦い続け、そして勝ち続けろ。

 死を受け入れろ、そして、父に会いに行け」

 

母はその言葉を最後に、銃弾の嵐を浴びて死に絶えた。

罪状は、怪物達への情報流通、手引き、その他多数の罪があったという話だ。

そしてその日、母の一族の次期当主となる少年は、俺の顔を焼いた。

 

「怪物の子は俺たちのおもちゃなんだってさ!だから付き合えよ!!怪物!」

 

母よ、貴方の言葉を受け入れましょう。

母よ、貴方の遺言はしかと心に刻みました。

母よ、俺は父に会いに行きます。

顔を毒で焼かれ、爛れ、痛みに悶えながらこの少年への復讐を誓った。

尊敬すべき母を殺した、憎きトメニアに復讐を誓った。

弱いくせに、集団で強きものを卑怯な手で屠る群衆に復讐を誓った。

そして、愛すべき父へ会いに行くことを誓った。

全ては、本能が叫ぶままに、闘争し続けるために。

 

「ああ、くだらねぇ。何が政治だ、何が差別だ。

 クソったれども。弱いくせによく吠えやがる。

 俺に勝てないくそどもは全て滅ぼす。

 卑怯な手で仲間を貶める奴らは全てきりさく。

 愚かで愛しい母よ、貴方の言葉はよくしみた。

 あなたは結局闘争の血に勝てなかったんだろう。

 俺も同じだ。戦い続けるために、俺は復讐を誓おう」

 

彼にとって、復讐とは。

闘争をするための手段でしかない。